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【書評】さとりをひらいた犬、を読んで心の静寂を取り戻す。

ブック


ISBN:978-8156-1159-0

「さとりをひらいた犬」ってどんな感じ?

全八章からなる主人公「ジョン」の旅路を通して
読者の心理的な現在地を知る助けとなるお話です。

読書習慣そのものの入門にピッタリな読みやすさで
甥っ子姪っ子にプレゼントしたい1冊ですね。

小さなお子さんがいらっしゃるなら、臨場感ある
ジェスチャーを交えての読み聞かせも出来そうな
気がします。

どんな所が良かった?

社会性を持つが故のジレンマ等を人間ではなく個性的な
特徴を持った動物で表現する事で、精神病理の実例等で
えげつない部分を上手にオミット出来ていると思えます。
お子さんに読んで貰って、成長するにつれ、ある程度心が
鍛えられた段階でAHマズローの本だったり、特定分野の
辛い体験録等に触れると、相乗効果的に精神的免疫
力構築に役立つと思いますね。

著者の刀根 健さんは、人々が言う所の”社会”という視点
で片付ける事無くしっかりと、”人格””ミクロ”としての私を含む
集合体をしっかり観察されてるようで、読了後の安堵感や
後味の良さから書店で平済みされるもの納得の出来栄えです。

読んでみて、作中の「ジョン」と似た認識をされた事が2度程あり
一つは”少年期”もう一つは”青年期”で、詳しくは当記事の
”魂の声”&”本当の自分”について、のオチに書かせて頂いてます。

現実世界に居る「オオカミのダルシャ」

直接お会いした訳では無いですが、姉の土産話で最も印象的な
「韓国の国際線空港で乗ったタクシードライバーのおじさん。」
そして思い出すのは、おじさんが姉と友人に贈った激励の言葉。

「人は世界を見て廻る義務が在る。」

ドライバーのおじさんは、職業柄きっと異国の方や旅をされた
方を送迎される際、様々な話を聴かれたものだと思います。

時間内にお客さんを目的地へ送迎するお仕事ではありますが
送迎中、貴重な一次体験談等を聴かれ歓談のひと時が
瞬きの様に感じられた事でしょう。

韓国のドライバーおじさんは、よくあるレンガを積む例えあ話である
「レンガを積むだけのつまらない仕事」か「城を作る偉大な仕事」
で言えば確実に後者であり。

きっと偉大な旅路時の助っ人としての誇りを自ら見出された
のだと思います。

何かと、かの国の内情について否定的な見解が発信される事が
多い昨今ですが、ドライバーのおじさんは地上の誰しもが「ダルシャ」
になり得る事を証明されていますね。

旅をする人が多ければ相互に見聞が広がり、収益にもなり
お金以上に貴重な一時情報を聴ける、皆幸せになれて素敵ですね。

私にも「かわいい子には旅をさせろ」の心、解るぞドライバーのおじさん!

作中の”魂の声”&”本当の自分”について

~「ジョン」っぽい評価についての”オチ”~

”少年期”は、テスト点数ランキング後ろからトップという意味です。
”青年期”は、得意分野で高く評価されるも、就業面で失敗しました。

詳しく説明させて頂くと、
”少年期”は点数で優劣、順位を競う事に興味が湧かず
点数が取れない=恥ずかしめて良いという当時の風潮と
ゼロサムゲームに半ば強制参加する事へ到底納得に至らない
事を勉強出来ないながら、感覚で理解していた所があります。

”青年期”は当時夢中だった事に挑み失敗し行動の証明となり
片鱗が血肉となって、別の仕事への足掛かりとなり今でも役に
立っています。

もっと簡単に書くと、
「ジョン」でもあったし「ガジョ」でもあった、そんな所ですね。

最後に

物語の中にいる個性的なキャラクターが自分を外側から
観察していたら、ちょっと人生楽しく気がしますね。

自由とはパッケージ化された思想や行動様式ではなく
各個人で、行動と選択や発想によって築き上げた活き方
である事をとても丁寧に伝えてくれます。

かと言って、食べるために働く沢山の人々がこの本を読んだ後
自分の境遇を嘆く事は無いでしょう。

電子書籍版をスマホにインストールし、通勤前後や空いた
時間に読んで人知れず肯定感を高める手段として
とてもお勧めです。